2008年5月11日日曜日

stress




会社でのストレスは、挙げればきりがありません。さらに家庭でも、子どもの受験、実家の親の体調、配偶者の病気と、ストレスのもとはたくさんあります。このような外部からのストレス刺激に、体はどう対処しているのでしょうか。

 今回から数回にわたって、ストレスが原因となる体の病気についてお話しします。

 まずはストレスに関連する体の仕組みの話です。少々細かいかもしれませんが、仕組みを知って早めに自分の異常に気付くことにより、大事を防ぐことができると思います。どうぞお付き合いください。

ストレスの伝わり方

 外部からストレスが加わると、大脳を経由して、視床下部がこれを刺激として感知し、神経系と内分泌系(ホルモン系)に伝達します。視床下部は、神経系と内分泌系を総合的に調節し、ホメオスタシス(生理状態を一定に保とうとするシステム)を維持する機能を持っています。

 伝達を受けた神経系の1つである自律神経が、内臓など諸器官に働き掛け、呼吸や血圧を調節します。一方、内分泌系は内分泌腺に働き掛け、体内のホルモンを調節します。


図1 ストレス刺激の伝わり方
 しかし、ストレス刺激が強すぎたり、長期間に及んだりした場合、神経系や内分泌系はバランスを保ちにくくなり、ホメオスタシスを維持することが難しくなります。その結果、全身にさまざまな不調が起きてくるのです。

自律神経の働き
 自律神経は自分の意思とは関係なく、内外の刺激に反応して消化、呼吸、発汗および代謝のような不随意な機能を統御しています。自律神経には、「交感神経」と「副交感神経」の2系統があることはご存じの方も多いでしょう。
 交感神経は、「闘争か逃走か」(fight or flight)といわれるようなストレスの多い状況になると、体を活動状態にします。血圧や心拍数を上げ、消化管や皮膚への血液量を減らして骨格筋への血液供給量を増加させます。
 副交感神経は主に睡眠時やリラックスしているときに働きます。消化管機能や排尿機能は副交感神経がつかさどっています。活動時とは反対に、血圧や心拍数を下げて消化管や皮膚への血液量を戻します。
 両方の神経が優位を入れ替わり、バランスを保つことで体の恒常性が保たれています。しかし、夜更かしやストレスで脳を休める時間が減ってしまうと交感神経優位が続き、不調が生じてきます。いわゆる自律神経失調症といわれるものです。
内分泌系の働き
 内分泌系とは、内分泌腺の集まりです。内分泌腺は内外の刺激に応じ、伝達物質であるホルモンを作って血液中に放出し、特定の器官の働きを調節します。
 内分泌腺には、次のようなものがあります。
        •        脳の松果体(睡眠、覚醒のリズムをコントロールする)
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        •        上皮小体(血中カルシウム濃度を調節する)
        •        
        •        甲状腺(代謝を高進させるホルモンを分泌する)
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        •        副腎(緊張状態下で素早く心拍数を上げるホルモンを分泌する)
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        •        膵臓(血糖値を調節する)
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        •        卵巣/精巣(性ホルモンを分泌する)
 ほとんどすべての内分泌腺は、下垂体から放出されるホルモンに制御されています。さらにその下垂体は、隣接している視床下部の制御を受けています。
 神経系と内分泌系は協力して体をコントロールしているのですが、神経系は素早く反応し、効果の持続が短いのに対して、内分泌系はゆっくりと持続的な効果を及ぼします。
 このように私たちの体は、バランスを保つための非常によくできた仕組みを持っているといえます。
ストレス反応は人によって異なる
 これだけよく制御されている体を持つ私たちですが、それでもストレスの刺激が強すぎたり、長すぎたりすれば不調を来します。
 しかし、同じストレス刺激を受けても、病気になる人とならない人がいます。それは、ストレス刺激によって起こされるストレス反応に個人差があるからなのです。
 もともとの体質や性格、育った環境、それまでの経験、そしてそこから生まれた価値観などの考え方によって、ストレスの受け取り方は違います。例えば体育会系で肉体的に鍛えられている人にとっては、長時間の立ち作業はさほど苦にならないかもしれません。親にしかられたことのない人にとっては、上司の厳しい指摘はひどくつらく感じられるかもしれません。
自分の特徴をつかみ、変化を見逃さない
 ストレス反応に個人差があるのは自然なことです。まずは自分の特徴をよく把握し、どういう刺激に弱いかをつかんでおきましょう。自分に合った対処法を見つけて、ストレスを軽減するようなスタイルを確立することが重要です。
 そのうえで、体の不調(めまい、だるさ、どうき、吐き気や下痢など)や精神的な不調(いらいら、落ち込み、気分の浮き沈み、集中力の低下、不安感)といった変化を見逃さないようにします。
 不調に気が付いたら、まずは休養を取ることが大切です。2週間から1カ月様子を見ても良くならないようでしたら、医師に相談してみましょう。
 過度のストレス状態にあって、すでに何らかの心身の異常があるにもかかわらず、自分では気付かない場合もあります。そういうときは、周囲の人の目でチェックしてもらうことが大切です。


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